月の雫、君の瞳から・・・(2)
前回の続きから ※ランジエが病んでるので注意
「ボリスだって、友達だって思ってるよっ 当たり前じゃないか」
何かを見ないようにするためか、ルシアンは瞳を伏せて私の言葉を否定した。
私はそんなルシアンに追い討ちをかける。
「そうですか 友達であれば、ボリスが誰と一緒にいたいと思っているかわかるでしょう」
「それは・・・」
隣を見なくても、ルシアンの表情が曇っていくのがわかる。
「ねぇルシアン、以前にドッペルゲンガーの森に行った話を私にしてくれましたよね」
「確か、皆さんとはぐれて、ボリスのドッペルゲンガーに出会ったと」
ルシアンは小さく頷いた。
「その時、ドッペルゲンガーに『もっと役に立つ友人が必要だ』と言われたそうですね」
我ながら、ルシアンに酷いことを言っているな、と思ってはいる。
「・・・そうだよ でもすぐ偽物だって分かったよ だって、ボリスはそんなこと言わないもん」
ルシアンは何かを守るため、必死に私の言葉を否定している。
「そう、『言わない』でしょうね ボリスも流石に言葉にはしないでしょう でも・・・」
そんな健気なルシアンの傷を切り開いていく。
「だから、あなたは・・・」
続きの言葉は、ルシアンによって紡がれた
「・・・うん、だから僕は・・・ずっと不安だったんだ」
「本当はボリスに恨まれているんじゃないかって思っていたんだ・・・これでいい?」
隣を見ると、ルシアンはその月の瞳から涙を零しながら小さく肩を震えさせていた。
その姿はいつもの元気で無邪気なルシアンからは想像もできない程、か弱く美しく見えた。
「僕は役に立たないし・・・ボリスの邪魔になってるんじゃないかなって・・・思ってて・・・不安だったんだ・・・」
「ボリスが今一緒にいたいと思ってるのは・・・僕じゃなくてイソレット・・・だよ・・・」
「僕じゃ・・・何も出来ないし、お兄さんの代わりになれない・・・でもイソレットなら・・・」
泣きながら、ルシアンは続けた。
「友達だもん・・・ボリスの幸せを・・・応援しないと・・・駄目なんだよね・・・」
「ボリスはやっと・・・一緒にいたいと思える人と・・・一緒にいるんだもん」
それを聞いて満足した私は、ルシアンを抱きしめた。多分、今の私は月光を受けて嗤っている。
(ルシアンの心の古傷から毒と膿を取り除いた。次は治療しないと)
「えっ ランジエ?」驚くルシアンをきつく抱きしめたまま言葉をかけた。
「私には、あなたが必要なんです、ルシアン」
「ランジエ・・・?」
「私は、あなたと共に二人で生きていきたいのです 一緒にいて下さい」
ルシアンも腕を私の背中に回して、答えてくれた。
「僕ね、好きな人とは協力して生きていきたいんだ 重い荷物は二人で持てるような関係になりたいんだ」
「だから・・・ね、必要だって言ってくれて・・・すっごく嬉しいよ・・・うぅ・・」
愛しいルシアンが、私の腕の中で泣いている。
でも、もう心配はいりません。これからは私がルシアンを守るのだから。
「ルシアン、今日の返事を後日聞かせて下さいね」
ルシアンのサラサラした金髪を撫でながら言うと、彼は頷いてくれた。
「今夜は遅いので寮に戻りましょう」
私はルシアンを抱きしめたまま立ち上がらせた。
もうルシアンが涙を流す為に港に来ることはないだろう。
そう、これから港に来るのは私。
(もう二度と、ボリスが私のルシアンの前に現れてはいけないのだから・・・)
私はサイレンサーを手に取った。これなら、発砲音で騒がれることはない。
(せめて、一撃で終わらせますからね・・・ルシアンの友人だった人・・・)
ドッペルの話は、今は無き懐かしのEP1 cp7(ルシのチャプター)です。
「不安だった・・・」と語るルシアンが忘れられなくて。